2024.7.26 (金)
【声明】「北陸新幹線延伸計画(小浜ルート)」は直ちに「断念」、「延伸計画(敦賀~大阪間)」そのものの中止をーー在来線の強化や耐震化をはじめ地域公共交通の整備・充実こそ
日本共産党京都府委員会は、2024年7月26日(金)に以下の声明を発表しました。
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今年の6月20日、石川県議会が「米原ルート検討を国に求める決議」を可決。「米原ルートか小浜ルートか」といった報道が目立っています。与党PTの西田昌司委員長は、現計画に固執し「25年着工」の発言を続けています。また「すでに環境アセスメントは完了」と事実にもとづかない発言を行い、「地上駅案」を持ち出すなど(6月4日付京都新聞)発言は混乱しています。これまで推進の立場であった維新の会は、「米原ルートにすべき」と態度を転換。引き続き「推進」の立場をとる自民党内でも「延伸計画(小浜ルート)」に異を唱える声が出ています。
さらに、7月18日・19日付けのマスコミ各紙は、国交省への取材として、「(敦賀~大阪間)の延伸費が2倍に膨張」「京都駅3案(地下案)」と報道。国交省側が提示するとされている京都駅3候補地は、当然そこに向かう別々の3ルートの存在を示すものであり、「1本の線」として示すことができず、「複数ルート」の提示で責任逃れをしようとしていることは、「延伸計画」の破綻を自ら告白するものです。また、建設費の大膨張は、投資効果が大きく下がり、着工の条件を満たさないことを示しています。
このように「北陸新幹線延伸計画」はますます混迷を深めており、こうした混迷は、同計画の解決不能の問題によるものです。
「北陸新幹線延伸計画(小浜ルート)」に対する住民運動は、この3年ほどで南丹市美山から京都市内、京田辺市や亀岡市などで18以上のグループが生まれ、反対や見直しを求める運動が広がっています。2022年4月の京都府知事選挙の際に行った世論調査(京都新聞調査)では、「北陸新幹線延伸に否定的」(京都新聞)が6割にのぼっています。「延伸計画(小浜ルート)」懸念の声は、「京都の水」を大切にする食文化や染色、伝統産業などに関わる人々から広くあがっています。これらの世論と運動によって、知事選挙や京都市長選挙では一大争点となり、2月の京都市長選挙では、現市長も含めて、主要4候補の誰一人として現行計画に「推進」の立場を表明できない事態となりました。
第一の問題は、「延伸計画(小浜ルート)」では「巨大地下トンネル」による地下水・河川などの影響、有害物質を含む発生土の問題など、この「延伸計画」による自然環境・住環境への影響は計り知れないという点です。
そもそも、この間の国会要請行動で、国土交通省は「環境影響評価ができなければ、工事着工は法律上できません」と述べてきました。実際に住民の反対により環境影響調査ができず着工のめどが立たない中、本来は工事認可後に行うべき「ボーリング調査」などに調査費をつけ脱法的に強行しているのが実態です。
「延伸計画」は、敦賀から新大阪まで140キロメートルの80%がトンネルであり、京都の地下を縦断する形で巨大なトンネルが通ります。これにより生み出される発生土は880万㎥にのぼり、その処理方針さえ示されていません。また発生土には少なからずヒ素などの猛毒の重金属が含まれ、鉄道運輸機構もヒ素など「対策土の含有率は30%」と認めており、その発生見込み量や処理方針も示されていません。京都北中部では、由良川など河川や地下水の枯渇漏出による用水や生活への影響、京都市内では「巨大トンネル」による地下水の枯渇(京都地下鉄東西線建設工事では、290か所の井戸の水位低下や枯渇への補償が行われた)や鴨川などの河川への影響、活断層への影響が強く危惧されています。鉄道運輸機構は、6月19日の報告で「地下水流動について・・深い層では成分分析の結果から京都盆地に広く分布する難透水層の下を流れて、京都駅や伏見酒造エリアまで到達している可能性がある」と認めました。リニア新幹線トンネル工事では、岐阜県瑞浪市の集落の井戸が一斉に枯渇する事態も起きています。地下水への影響は、日本酒、和菓子、豆腐など京都の地場産業に取り返しのつかない事態を引き起こす危険があります。また、京都駅〜松井山手は、仮に地下だとすれば巨椋池の地下水、京都水盆の地下水が抜ける可能性や農業や工業の用水への影響、軟弱地盤であることから周囲への影響が懸念されます。
第二の問題は、莫大な建設費への税金投入により、府民・市民の暮らしと営業への重大な影響です。建設費は2兆1000億円(費用便益比は1.1)とされていましたが、資材高騰などにより3.9兆円~4兆円と報じられ、費用便益比が1を大きく下回り「着工5条件」に当てはまらない事態となります。JR西日本社長も、6月27日の記者会見で「資機材価格の高騰を踏まえ、再度、建設費の見積もりが必要」と建設費の大膨張を示唆しました。国土交通省も、これまでの見積もりを見直し、「北陸新幹線延伸(敦賀~大阪間)の建設費が当初の2倍」かかることを認めています。しかも重大なことは「延伸によってほかの新幹線駅と接続し便利になることを踏まえた投資効果の試算方法の見直しの検討」まで言い出していることは重大です。これらの建設費に加え京都駅や松井山手駅建設を含む駅周辺の大型開発は自治体財政に長期にわたって大きな負担を負わせることになります。財源の見通しの確保、収支採算性、投資効果など「着工5条件」を満たさないことはあきらかです。
第三の問題は、大都市圏を結ぶ北陸新幹線やリニア新幹線は、在来線の切り捨てなどによって大都市への一極集中を加速させ、地方の衰退をもたらすことになりかねないという点です。また、気候危機が深刻化する中で、大きな電力を消費する高速鉄道網は、再エネ・省エネの流れに逆行することになります。
日本共産党は、こうした「延伸」計画の問題を繰り返し国会、京都府議会、京都市会、関係する地方自治体議会で取り上げるとともに、政府交渉、自治体要請行動を行い、「計画中止」を求めてきました。
整備新幹線やリニア新幹線などの「高速・大量輸送鉄道」最優先で税金をつぎ込むやり方は、大都市と「地域」の格差をいっそう広げることになります。全国でも京都でも、在来線の切り捨て・縮小が大きな問題になっています。京都府内の在来線では、この間、山陰線の複線化が進まない一方、減便によって「アルバイトの時間に間に合わなくなった」「授業時間に間に合わない」「1時間に1便もないのは本当に困る」など、日常生活にかかわる切実な声が出されています。また、北陸新幹線は敦賀まで建設されましたが、これによって、サンダーバードの運行区間が縮小され、利便性が大きく後退しています。「財界の利益第一」の立場で鉄道運営を進めてきた自民党政治の結果です。
日本共産党は、鉄道を地域社会の大切な基盤として位置づけ、その再生を目指します。今求められるのは、サンダーバードの金沢までの復活など在来線の強化、路線バスをはじめとした地域公共交通の充実によって住民生活と地域社会を支えること、南海トラフ大地震が懸念される中、今ある鉄道網の整備や耐震強化など災害対策を急ぐことです。また、能登半島地震の復旧の見通しが立たない深刻な状況の中、こうした大型開発より災害復旧こそ優先すべきではないでしょうか。
日本共産党は、「北陸新幹線延伸計画」そのものを中止し、在来線の強化や耐震化をはじめ地域公共交通の整備・充実に政治が役割を発揮するよう強く求めるものです。
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同日おこなった記者会見の模様はこちら→動画
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【声明】
「北陸新幹線延伸計画(小浜ルート)」は直ちに「断念」、「延伸計画(敦賀~大阪間)」そのものの中止を ――在来線の強化や耐震化をはじめ地域公共交通の整備・充実こそ
2024年7月26日 日本共産党京都府委員会
1、ますます混迷を深める「北陸新幹線延伸計画」――反対・見直しを求める世論と運動の広がり
「北陸新幹線延伸計画」について、混迷が広がっています。国交省は、一昨年(2022年12月14日)「2023年度春着工」断念を明らかにし、2023年8月には、「2024年着工は困難」と与党PT(自民党と公明党で作る与党プロジェクトチーム)の場で説明、今日まで着工のめどはたっていません。今年の6月20日、石川県議会が「米原ルート検討を国に求める決議」を可決。「米原ルートか小浜ルートか」といった報道が目立っています。与党PTの西田昌司委員長は、現計画に固執し「25年着工」の発言を続けています。また「すでに環境アセスメントは完了」と事実にもとづかない発言を行い、「地上駅案」を持ち出すなど(6月4日付京都新聞)発言は混乱しています。これまで推進の立場であった維新の会は、「米原ルートにすべき」と態度を転換。引き続き「推進」の立場をとる自民党内でも「延伸計画(小浜ルート)」に異を唱える声が出ています。
さらに、7月18日・19日付けのマスコミ各紙は、国交省への取材として、「(敦賀~大阪間)の延伸費が2倍に膨張」「京都駅3案(地下案)」と報道。国交省側が提示するとされている京都駅3候補地は、当然そこに向かう別々の3ルートの存在を示すものであり、「1本の線」として示すことができず、「複数ルート」の提示で責任逃れをしようとしていることは、「延伸計画」の破綻を自ら告白するものです。また、建設費の大膨張は、投資効果が大きく下がり、着工の条件を満たさないことを示しています。
このように「北陸新幹線延伸計画」はますます混迷を深めており、こうした混迷は、同計画の解決不能の問題によるものです。
「北陸新幹線延伸計画(小浜ルート)」に対する住民運動は、この3年ほどで南丹市美山から京都市内、京田辺市や亀岡市などで18以上のグループが生まれ、反対や見直しを求める運動が広がっています。2022年4月の京都府知事選挙の際に行った世論調査(京都新聞調査)では、「北陸新幹線延伸に否定的」(京都新聞)が6割にのぼっています。「延伸計画(小浜ルート)」懸念の声は、「京都の水」を大切にする食文化や染色、伝統産業などに関わる人々から広くあがっています。これらの世論と運動によって、知事選挙や京都市長選挙では一大争点となり、2月の京都市長選挙では、現市長も含めて、主要4候補の誰一人として現行計画に「推進」の立場を表明できない事態となりました。
2、「北陸新幹線延伸計画」3つの重大問題
日本共産党京都府委員会は、2021年6月に発表した第4次提言(「京都のまちと自然を壊し、巨額の税金を投入する北陸新幹線『延伸』計画は中止を」)で、同計画の問題を指摘し、「北陸新幹線『延伸』計画は中止する以外にない」と表明してきました。ここで指摘した問題点がますます浮き彫りになっています。第一の問題は、「延伸計画(小浜ルート)」では「巨大地下トンネル」による地下水・河川などの影響、有害物質を含む発生土の問題など、この「延伸計画」による自然環境・住環境への影響は計り知れないという点です。
そもそも、この間の国会要請行動で、国土交通省は「環境影響評価ができなければ、工事着工は法律上できません」と述べてきました。実際に住民の反対により環境影響調査ができず着工のめどが立たない中、本来は工事認可後に行うべき「ボーリング調査」などに調査費をつけ脱法的に強行しているのが実態です。
「延伸計画」は、敦賀から新大阪まで140キロメートルの80%がトンネルであり、京都の地下を縦断する形で巨大なトンネルが通ります。これにより生み出される発生土は880万㎥にのぼり、その処理方針さえ示されていません。また発生土には少なからずヒ素などの猛毒の重金属が含まれ、鉄道運輸機構もヒ素など「対策土の含有率は30%」と認めており、その発生見込み量や処理方針も示されていません。京都北中部では、由良川など河川や地下水の枯渇漏出による用水や生活への影響、京都市内では「巨大トンネル」による地下水の枯渇(京都地下鉄東西線建設工事では、290か所の井戸の水位低下や枯渇への補償が行われた)や鴨川などの河川への影響、活断層への影響が強く危惧されています。鉄道運輸機構は、6月19日の報告で「地下水流動について・・深い層では成分分析の結果から京都盆地に広く分布する難透水層の下を流れて、京都駅や伏見酒造エリアまで到達している可能性がある」と認めました。リニア新幹線トンネル工事では、岐阜県瑞浪市の集落の井戸が一斉に枯渇する事態も起きています。地下水への影響は、日本酒、和菓子、豆腐など京都の地場産業に取り返しのつかない事態を引き起こす危険があります。また、京都駅〜松井山手は、仮に地下だとすれば巨椋池の地下水、京都水盆の地下水が抜ける可能性や農業や工業の用水への影響、軟弱地盤であることから周囲への影響が懸念されます。
第二の問題は、莫大な建設費への税金投入により、府民・市民の暮らしと営業への重大な影響です。建設費は2兆1000億円(費用便益比は1.1)とされていましたが、資材高騰などにより3.9兆円~4兆円と報じられ、費用便益比が1を大きく下回り「着工5条件」に当てはまらない事態となります。JR西日本社長も、6月27日の記者会見で「資機材価格の高騰を踏まえ、再度、建設費の見積もりが必要」と建設費の大膨張を示唆しました。国土交通省も、これまでの見積もりを見直し、「北陸新幹線延伸(敦賀~大阪間)の建設費が当初の2倍」かかることを認めています。しかも重大なことは「延伸によってほかの新幹線駅と接続し便利になることを踏まえた投資効果の試算方法の見直しの検討」まで言い出していることは重大です。これらの建設費に加え京都駅や松井山手駅建設を含む駅周辺の大型開発は自治体財政に長期にわたって大きな負担を負わせることになります。財源の見通しの確保、収支採算性、投資効果など「着工5条件」を満たさないことはあきらかです。
第三の問題は、大都市圏を結ぶ北陸新幹線やリニア新幹線は、在来線の切り捨てなどによって大都市への一極集中を加速させ、地方の衰退をもたらすことになりかねないという点です。また、気候危機が深刻化する中で、大きな電力を消費する高速鉄道網は、再エネ・省エネの流れに逆行することになります。
日本共産党は、こうした「延伸」計画の問題を繰り返し国会、京都府議会、京都市会、関係する地方自治体議会で取り上げるとともに、政府交渉、自治体要請行動を行い、「計画中止」を求めてきました。
3、「北陸新幹線延伸計画」は中止し、在来線の強化や耐震化をはじめ地域公共交通の整備・充実こそ
今、問われていることは、地下水・残土をはじめとした環境破壊を引き起こし、在来線の切り捨て、莫大な建設費を伴う「北陸新幹線延伸計画」そのものの是非です。整備新幹線やリニア新幹線などの「高速・大量輸送鉄道」最優先で税金をつぎ込むやり方は、大都市と「地域」の格差をいっそう広げることになります。全国でも京都でも、在来線の切り捨て・縮小が大きな問題になっています。京都府内の在来線では、この間、山陰線の複線化が進まない一方、減便によって「アルバイトの時間に間に合わなくなった」「授業時間に間に合わない」「1時間に1便もないのは本当に困る」など、日常生活にかかわる切実な声が出されています。また、北陸新幹線は敦賀まで建設されましたが、これによって、サンダーバードの運行区間が縮小され、利便性が大きく後退しています。「財界の利益第一」の立場で鉄道運営を進めてきた自民党政治の結果です。
日本共産党は、鉄道を地域社会の大切な基盤として位置づけ、その再生を目指します。今求められるのは、サンダーバードの金沢までの復活など在来線の強化、路線バスをはじめとした地域公共交通の充実によって住民生活と地域社会を支えること、南海トラフ大地震が懸念される中、今ある鉄道網の整備や耐震強化など災害対策を急ぐことです。また、能登半島地震の復旧の見通しが立たない深刻な状況の中、こうした大型開発より災害復旧こそ優先すべきではないでしょうか。
日本共産党は、「北陸新幹線延伸計画」そのものを中止し、在来線の強化や耐震化をはじめ地域公共交通の整備・充実に政治が役割を発揮するよう強く求めるものです。
以上
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同日おこなった記者会見の模様はこちら→動画