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「提言」京都懇談会での志位和夫委員長の報告(1)

 7日、京都市東山区のホテルで開催された「社会保障と経済・財政の立て直し」懇談会での志位和夫委員長の報告(大要)を紹介します。

                         ◇

 お集まりのみなさん、こんにちは。ご紹介いただきました日本共産党の志位和夫でございます。今日はお忙しいところ、たくさんの方々が足をお運びいただきまして、まことにありがとうございます。まず心からのお礼を申し上げたいと思います。
 民主党・野田政権は、2014年に8%、2015年に10%と消費税を大増税する計画を、「税と社会保障の一体改革」という名ですすめようとしております。全国どこを歩いておりましても、不安と怒りの声が聞こえてまいります。

 同時に、それでは安心できる社会保障をどうやってつくるのか、財源はどうするのか、国と地方の財政危機をどう打開していくのか。これらの問題について、多くの国民のみなさんが、答えを求めていらっしゃると思います。
私たち日本共産党は、野田政権の大増税計画には断固反対の立場を貫くとともに、社会保障充実、財政危機打開をどうすすめるかについての抜本的対案が必要だと考えまして、この「提言」をつくりました。
この「提言」は、今日はパンフレットでお渡ししてありますが、1年半かけて、練りに練って数字的な試算も充分した上で出したものです。

 私は、まず政府が「一体改革」の名ですすめている大増税計画の問題点がどこにあるか、そしてこの私たちの「提言」の中心点、この二つの話を報告させていただきたいと思います。どうか最後までよろしくお願いいたします。


「一体改革」の名ですすめられている政府の大増税計画の問題点

「3つの合理化論」のウソ

 まず野田政権がすすめている「税と社会保障の一体改革」なるものの問題点についてご報告させていただきたいと思います。
 ここに政府の「一体改革大綱」の文書があります。ここに消費税の大増税の計画が書いてあるわけですが、その冒頭の部分――「はじめに」という部分で、増税をすすめる理由として、「3つの合理化論」が書いてあります。

 第1は、「社会保障の充実と安定化」がはかられる。あたかも社会保障がよくなるかのようなことが書いてあります。
 第2に、「社会保障の安定財源確保と財政健全化が同時達成される」。財政の展望が出てくるかのようことが書いてあります。
 第3に、「経済成長との好循環が達成」される。経済もよくなると書いてあります。
消費税を上げると、社会保障もよくなる、財政もよくなる、経済もよくなる。バラ色の日本ができますといわんばかりのことが書いてあるわけですが、結論から言いますと、これはすべて成り立たない話です。3つとも国民を欺くウソだということを、はっきりいわなければなりません。

 私は、「提言」を発表した3日後の2月10日に、衆院予算委員会で、1時間ほどかけて野田総理と論戦をいたしました。そこで明らかになった点も含めて、話していきたいと思います。


社会保障改悪と消費税増税との「一体改悪」

 第1に、「社会保障の充実と安定化」と言いますが、今度の「一体改革」で、社会保障はどうなるのかという問題です。
 消費税を5%から10%に値上げしますと、13・5兆円の増税です。目がくらむような大増税です。「そのうち、社会保障の新たな充実に使われるお金はいくらですか」と聞きますと、政府の答弁は「消費税1%分の2・7兆円です」というものでした。つまり、残り4%分は既存の財源に消費税が置き換わるだけで、社会保障の新たな充実には使われないということになります、たった1%分というのです。

 それでは、今度の「一体改革」なるもので、削減される社会保障はどれくらいか。お渡ししたパンフレットの22ページのグラフをご覧ください。
 まず、2015年までに、年金の給付が連続的に削減される計画です。子ども手当て削減、医療費の窓口の負担増、介護の利用料の値上げなどで、あわせてちょうど2・7兆円も削減されてしまう。「充実」分の2・7兆円がまるまる吹っ飛んでしまいます。
 それから「中長期の計画」とされていますが、年金支給開始年齢の引き上げで、6兆円から10兆円の実質負担増になります。こうして、「充実」分をはるかに超える切捨てのメニューがずらりと並んでいます。

 さらに、2・7兆円の「充実」というものも実は怪しいんですよ。「充実」というが、この中には国民を苦しめるいろいろな「毒」が入っています。政府が「充実」の目玉としているのが、「子ども・子育て新システム」ですが、この新しい保育の仕掛けというのは、児童福祉法を改悪して、これまで市町村が負っていた保育への義務をなくしてしまおうというものなのです。そうなりますと、お父さんお母さんが直接保育園を探して、自力で契約しなければならなくなる。

 待機児童が大問題になっていますけれども、その解消にもまったく逆行してきます。わが党の田村議員が、この問題を取り上げまして、「新しいシステムになったら、待機児童の数をつかむんですか」と聞いたら、小宮山厚生労働大臣は「(法律では)数を把握することにはなりません」と答えました。なぜ市町村の保育への義務付けをはずすのかと田村さんが聞いたら、小宮山大臣の答弁はふるってました。「義務付けしていてもこんなに待機児童が増えるんだから、はずすんだ」というのです。それをいってはおしまいですね。社会保障がよくなるどころか、どの分野みても、切捨てだらけというのが実態です。

 社会保障については、国会質疑のなかで、ひどい議論がでてきました。民主党の前原政調会長が、「社会保障は無駄の宝庫だ。いかに切り込んでいくかが大事だ」といって、生活保護の医療扶助の切捨てなどを政府に公然と求めました。「社会保障は無駄の宝庫」――−よくもこんな冷酷な言葉が出たものです。「無駄」というなら、その象徴となっている八ツ場ダムを、いったんは中止すると言ったのは誰ですか。中止するとあれだけ大騒ぎして、結局は建設をすすめると裏切ったのは誰ですか。ああいうムダ遣いは平気ですすめながら、社会保障は情け容赦なく削っていく。「ムダの宝庫」とこんな冷たい言葉は、私は、自民党時代でも聞かなかった言葉だと思います。

  「一体改革」と言いますと、何となく、社会保障は良くなるんじゃないかと、お考えの方もいらっしゃるかも知れないけれど、実は社会保障改悪と消費税増税との一体改悪なんだということを、まず私は強調したいと思うのであります。


「安定財源」どころか、財政を不安定にさせる

 第2に、消費税を増税すれば、社会保障の「安定財源」を確保し、「財政健全化」が「同時に達成」される。つまり財政がよくなる。いったい、こんな理屈が成り立つのかという問題です。
 パンフレットの28ページのグラフをごらんください。消費税を5%に増税する前の年の1996年度と、直近の2010年度の国と地方の税収を比較したものです。比較しますと、たしかに5%に上げたおかげで、消費税の税収はしっかりと増えております。しかし、他の税収が減ってますでしょう。その結果、税収の総額は、90兆円から76兆円に14兆円も落ち込んでいます。14年間の累計で計算しますと、84兆円もの税収が減っています。その分、借金が増えることになりました。

 その最大の原因は、消費税増税をきっかけに、景気が悪化し、日本経済の長期にわたる後退と停滞が続いているからです。さらに、大企業と大金持ちへの減税をやった。両方が相まって、税収の空洞化が起こっている。ここに1番の問題があります。
消費税を増税しても、経済を悪くしてしまったら、全体の税収は減るのです。消費税増税というのは、社会保障の「安定財源」確保にもつながらないし、「財政健全化」にも役に立たないと言うことが、事実をもって証明されているのではないでしょうか。

 よく、消費税増税派は、こんなことを言うんです。「消費税は、景気に左右されない安定財源だ」。たしかに消費税だけ見れば、景気に左右されません。税金を、取る方の側から言ったら、景気がよかろうが悪かろうが、消費税はがっぽり必ずとれます。しかし取られる方から言ったら、景気が悪くても払わないといけないのが消費税ですから、こんなにつらい税金はありません。
消費税増税というのは、消費税だけを見たら、たしかに税収が増えるかもしれないけれど、税収の全体を見たら、「安定化」じゃなくて、「不安定」にさせるというのが特徴だということを私は言いたいと思います。


日本経済ささえる家計消費と中小企業に大打撃

 第3に、「経済成長との好循環が実現する」というけど、本当でしょうか。私は、こんな理屈が政府の文章に堂々と出てくること自体が、はっきり言って噴飯ものと言いますか、荒唐無稽と言いますが、脳天気と言いますか、どう表していいかわからないようなことだと思います。平気で、「消費税をあげたら景気がよくなる」ということを書いていること自体が、日本の経済について、政府がいかにまじめに考えていないかを証明するものだということを強く言いたいと思います。

 いま消費税を大増税したら、日本経済はどうなるのか。二つの大問題が引き起こされてまいります。
 一つは、日本経済の6割を占める家計消費への打撃です。パンフの30ページのグラフをごらんください。1997年に、消費税を5%に上げることをはじめ、「9兆円負担増」というのが強行されました。橋本内閣のもとでおこなわれたものですが、このときは、グラフをご覧いただけたらわかるように、所得も消費も伸びつつあった時期だったんです。景気が回復しつつある時期だったんです。それを上回る「9兆円負担増」で、景気の底がぬけてしまったというのが、このときの経験でした。

 私は、当時(1997年)、橋本首相と国会でさんざん論戦し、私たちの試算も示して、いま増税したら景気の底が抜けてしまいますよと言いましたら、橋本さんは答弁できなくなって、「それも一つの見識です」といわざるをえなかった。増税が強行され、やはり景気の底がぬけてしまうという結果になりました。1年後、橋本首相と再度国会で論戦して、「反省すべきではないか」とただしますと、「消費税増税の影響があった」と認めざるをえなかった。これは誤りだったと決着がついている問題なんですね。

 ところが今度はどうでしょう。今度の大増税計画は、その後、長期にわたって、所得も消費も減っているもとでの大増税です。ただでさえ減っているところに、消費税の増税で13・5兆円の負担増、社会保障の負担増と給付減などで、あわせますと20兆円を超える巨大負担増が、どーんとかぶさってくる。この影響がどれだけのものになるかは、ほとんど想像もつかないものだと言わなければなりません。家計消費がいよいよ大きく後退し、冷えこむことは間違いありません。

 いま一つの大問題は、日本の雇用の7割を支えている中小企業がどうなるかということです。パンフレットの33ページのグラフをご覧ください。これは日本商工会議所など中小企業4団体による詳細な調査結果です。「消費税が引き上げられた場合、販売価格に転嫁できるか」という問いに対して、5割から7割という中小企業が、「転嫁はできない」と答えておられます。

 私は、予算委員会での質問を準備する過程で、中小業者のみなさん、自営業のみなさんに集まっていただいて、お話をうかがいました。現在の5%でも転嫁はできないという深刻な実態がたくさん出されました。転嫁できない場合、身銭を切って払っている。「身銭を切る」というのはどういうことなのか。自分の保険を解約して消費税を払う。定期預金を下ろす。家族に無給で働いてもらう。ささやかな不動産を切り売りする。最後には泣く泣く人件費に手をつけざるをえない。こういう話が出てきます。

 下請けの中小企業の方にお話をうかがいますと、こういうことも訴えられました。大企業は、販売価格に消費税を上乗せして売りたくない。そこで、消費税があがった時に、その分を下請けの単価切り下げにかぶせてくるというのです。消費税があがった時に、下請け単価に消費税分を上乗せして払うどころか、逆に切り下げてくる。こういうやり方で、下請けの中小企業が苦しんでいるというお話もうかがいまいした。
 これが、10%になったら、日本から商店街がなくなり、町工場がなくなり、雇用を支えている中小企業の倒産、廃業が激増するという不安が、たくさんの方から私たちに届いております。

 私は、こういう状況を突きつけて、野田首相に、「転嫁できない場合、どうやって払うんですか」と聞きました。どうやって払うか答えられません。何と答えたかと言うと、「転嫁できる環境をつくります」。安住財務大臣などは、「安心して転嫁できるような環境をつくります」と答えました。「転嫁できる環境をつくる」というけれど、消費税が始まって以来23年間、「転嫁できない」という問題はずっと続いてきたわけでしょう。それが、5%から10%になったら、急に転嫁できるようになるわけないじゃないですか。私は、政府のこのひどい答弁を聞いて、本当にこの人たちは中小企業の実態を何もわかってないなということを強く感じました。

 いま日本経済は、長期にわたるデフレです。デフレというのは、需要が足らなくてモノが売れず、モノの値段が下がることです。そういうもとで、消費税増税が強行された場合、小売り価格に上乗せできるかと聞きますと、ほとんどの方から「難しい」という答えが返ってきます。そんなことやったらますます売れなくなる。

 だいたい、世界の先進国で、デフレという現象がこんなに長期にわたって続いている国などというのは、日本以外にないですよ。歴史上もないです。「デフレ下での消費税の大増税」などということは、世界のどこでもやったことのないことなんです。私は、それは、想像をこえる破局的な影響を日本経済にあたえると思います。

 家計消費と中小企業は、日本経済を支える「2つの柱」であります。そこに甚大な打撃となるのではないかとただしても、政府からまともな答弁が一つもない。考えてもいない。私は質問をしながら、これは恐るべきことだと思いました。

 この長期不況がつづくもとで、追い討ちをかける大増税ということになりましたら、政府が底なしの「大不況運動」の引き金を引くことになります。
 この政府の文書には、「3つの合理化論」があったけれども、全部だめになります。社会保障がだめになる。経済もだめになる。財政もだめになる。それこそ日本をお先真っ暗のドン底に突き落としてしまうというのが、いまの増税計画です。
 まずは、野田内閣の大増税計画に反対するという一点で、力をあわせようということを心から呼びかけたいと思います。(続く)

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