京都らしさを大切に /国宝と世界遺産をめぐって
京都らしさを大切に/国宝と世界遺産をめぐって
京都のまちのあり方をめぐり、この5月、2つの象徴的な出来事がありました。
一つは、琵琶湖疏水関連5施設の国宝指定が決まったことです。
琵琶湖疏水は、今も京都市民の命の水を供給し続けています。蹴上げで分岐し、南禅寺境内の水路閣を通って北上する疏水分線と、これに並行する「哲学の道」は京都らしさを象徴する観光名所としても親しまれてきました。疏水分線ができた当初は灌漑用水として広く利用されたそうですが、その後の都市化によってその用途も途絶え、高度成長期にはこれを埋め立てる計画も取り沙汰されました。これに対して住民から反対運動が起こり、京都市は埋め立てを断念。夏には蛍も舞う清流を伴う遊歩道として再整備されました。京都らしさは、このように、住民の運動とこれに応えた行政の決断で育まれてきました。
5月のもう一つの事件は、世界遺産・仁和寺前の高級ホテル建設に「待った」をかけた住民の訴訟を裁判所が棄却したことです。門川前京都市長の時期に、京都市はインバウンドをあてにしたホテル建設を主導しました。仁和寺前の他に、相国寺北側にも高級ホテル建設計画があり、周辺住民は建設許可を取り消すよう京都市を提訴しています。
京都市内高速道路計画や、東山三十六峰に関西電力の送電鉄塔を建てる計画などが持ち上がるたびに、住民はこれに反対し、草の根から運動を起こして開発を食い止め、まちの真ん中を一級河川鴨川が流れる景観、「蒲団着て寝たる姿や東山」と詠われた景観を守ってきました。
「国宝」や「世界遺産」の名にふさわしい京都の良さを守るために、今一度、府民的議論を起こしていきたいと痛感した、5月の2つの出来事です。
日本共産党京都府委員長 渡辺和俊