JCP京都

花のある寺

2005年11月1日掲載

⑥ 「正法寺」(西京区大原野)

きっと。春はすごい。

 善峰寺に向く途中であった。「花の寺」正法寺、勝持寺と古びた表示板が目にとまり、急遽、大原野の丘陵を山手に向かった。夕方近くということもあり、一人であった。

 真言宗東寺派 別格本山 正法寺とあった。狭い小橋をわたった瞬間、それまでの何気ない景色にかわって、作者の思想と技術が最高度に集約された空間が突然に表れた。そんな出会いであった。

 境内を一巡して思いめぐったことは、春には枝垂桜をはじめ、それは見事な「花の寺」となることが鮮やかに目に浮かぶ。中心には“鳥獣の石庭゛が見事に存在している。東山連峰を借景にして、象、フクロウ、獅子、蛙、うさぎ、亀などを表現した名石を配置。まさに鳥獣戯画となっている。この石庭は、春、夏、秋、冬とその季節にいちばん輝くようにつくられていると思った。

 ただ一つ気になったことが。借景に入る京の町並みに、いくつかのノッポビルが映るのには少し興ざめする。まちづくりをすすめる為政者の貧困を感じさせるのは私だけではないとも思った。

 さることながら、仏像も見ごたえのあるものが多数ある。聖観音。三面千手観音。薬師如来。愛染明王。走り大黒天。などなどと。

 ここもぜひ四季を訪れたいところである。まずは、11月中旬の紅葉まつりにもう一度。菊、万両、南天、ムクゲ、さざんかが秋を迎えていた。帰り道、大きな虹を見た。とても幸せな気分であった。(かわ・たつ)