JCP京都

花のある寺

2005年10月19日掲載

⑤ 「実光院」(左京区大原)

いつまでもいていいよ大原の実光院

「癒しの里大原」。いつ訪れても、そのうたい文句に誇張はない。道順にぐんとのびるススキ。大原の里一面に広がるコスモス、彼岸花。

 そのなかで、三千院は幾度となく訪れたものの実光院は初。三千院はそのみごとさ故の「癒し」にひきかえ、実光院はそこに何時間いても誰からも急がれることのない「居場所」のような「癒し」の空間に感じた。

 門をくぐり「はっ」と気づいた。これまで、なぜその名前すら気にとめることなく、素通りしてきたのだろうか。「天台声明」(てんだいしょうみょう)の道場という院の役割ゆえにかと。「声明」は聞きなれない言葉だが、「キリスト教でいえば賛美歌」にあたるものと院内のテープ解説が流していた。

「不断桜」で名が知られているともあった。ちらほら咲きであったが、たしかに毎年初秋に咲き始めて翌年春まで咲くというのは、不思議でもあり話題性もある。雪化粧の中に浮かぶ桜は何ともいえないとも聞いた。今年はぜひ見てみたいものだ。

 しかし、今日出会った、茶花(唐松草、石楠花、紫式部、ホトトギス・石蕗など)がそれぞれに調和し、メッセージを送り出していると思った。そして、季節ごとの「一期一会」のそれぞれとの出会いも。やはり、この院全体がつくりだすものが、他に替えがたい魅力と感じた。とても心地のよい初の出会いであった。(かわ・たつ)