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06年2月10日(金)掲載

永井愛 作・演出「歌わせたい男たち」を観てレビュー

神かくし

 永井愛さん作・演出のお芝居「歌わせたい男たち」が関西でも上演されると聞いて、びわ湖ホールに出かけました。

 ご存じのとおり、このお芝居は、「日の丸・君が代」を題材にしたコメディーです。

 この物語は、ある都立高校の卒業式直前の保健室での出来事で、君が代の演奏・斉唱や斉唱時の着席などをめぐってお話が進行します。

 内心の自由を教える事が処罰の対象になったり、斉唱時に生徒が不起立だと担任が処分されるなど、東京都でおこった事実も織り込まれ、コメディーといえども考えさせられます。

 お芝居は、「卒業式に自由が無くなった」と嘆く教員に、「『紅白幕を使用するかどうか』『来賓のあいさつ』などは各校の自由だし、卒業式の自由はいっぱいある」と校長に強弁させたり、小泉首相の演説をパロディーにした校長の演説を盛り込むなど、笑える場面が盛りだくさんでしたが、私には笑う事ができませんでした。

 「斉唱の時に着席すると、大好きな先生が処分される」と思い、自分の正義を曲げてしまう生徒。「個性豊かに」「自分の考えをしっかり持って」と教えてきた教師が、内心の自由について教室では語れない現実。(内心の自由について教えると、教育委員会の聞き取り調査があるそうです)

 芝居の後、永井さんのお話を聞く機会がありました。永井さんは「これはコメディーにするほかない」と思われたそうで、「どう考えても今おこっている事はおかしい事ばかりだ」「おかしい事は笑わないといけない」と話されました。芝居の中で、永井さんは、孤立する君が代反対派の教師に「あなた達が言っている事はおかしい事ばかりだ。おかしくって笑いたいんだけど笑えない。泣けてくる」「笑わせてくれよ」と語らせます。

 永井さん自身、「この芝居ではどちらが正しいなんて結論は語っていません」というように、結論めいた台詞は出てきません。でも普通に考えて何がおかしいかは教えてくれます。

 かつて「ウソも100回言えば本当になる」といった人もいましたが、私たちは、ウソを1000回言われても、おかしい事には「そんなアホな」と笑い飛ばせる感性が必要なのだと思います。

 昨年末に、幼い命が奪われる事件が続きました。京都では、学習塾の中で命が奪われる事件まで起きました。このことが当たり前になってしまわないように、感受性をにぶらせずにいたいと思います。

 日の丸の掲揚率や、君が代の実施率を調査する前に、教育委員会がやるべき仕事はいっぱいあるはずです。

 君が代を歌わせる事に躍起になるよりも、もっと大切な事、本当の意味で、こどもたちの心が豊かになることを考える教育委員会や政府であって欲しいと心から願います。人が人を大切にできる心を育てる。そんな教育が求められているのです。

 3月になると卒業式が実施されます。学校での最後の教育の場〈卒業式〉が、生徒一人一人にとって「自分も捨てたもんじゃない。私だってやれた」と思える場にして欲しいと願わずにおれません。

 同時に、学校だけではなく私たち大人が、周りのこどもたちに何ができるのかを考える事も必要になっています。

 教育現場でこどもたちの未来を考え、私心を捨てて努力している教職員の方々。こどもと共に悩み苦しんでいる保護者の方々。住みよい町をつくろうと願い努力している地域のみなさんが、力を合わせて社会のゆがみを正していく事が、今こそ必要なのだと思います。

 本当に改革すべき事は何なのか。手をつなぎ、力を合わせて未来を切り開きましょう。

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